パッションフルーツ【ハウス】の育て方について、実際の経験、自分たちの取り組みを中心に紹介いたします。前回は 準備編として、パッションフルーツを栽培するにあたっての、実際に自分たちが準備したこと(ハウスの清掃、高畝作り)についてご紹介しました。
前回の準備編の記事はこちら
今回は【苗植え編】として、実際にパッションフルーツ苗植えを行った際の方法と、生育の観察状況について、ご紹介します。
苗植え
9月某日
高畝に対して、1.5mの間隔で苗を植えます。そのまま植えても良かったのですが、少しでも高さを稼ごうということで、18cmのポットに植え替えて、そのポットの底面を切りとって、畝の上に置くことにしました。
ポットの土は、その辺で販売している野菜や花の土です。今回、使用したのは普通にJAで売っている野菜の土:10ℓ(約150円)です。第一の目的は活着することなので、安価な土でも十分です!
これらすべて、沖縄県で果樹(パッションフルーツやマンゴー等)の育成におけるスペシャリストから、パッションフルーツの作り方についてレクチャーを受けて実施しています。パッションフルーツは、これから北中城村の特産品として、品質の良いパッションフルーツを生産できるようにと、自治体を上げて農家さんを全面的にバックアップしてくれています。とてもありがたいです。
バークチップの下には、堆肥を混ぜた栄養豊かな土があります。そこへしっかり根が活着するように、底面はバークチップではなく、しっかりと土に接するようにポットを置くようにしましょう。
栽培管理
育成状況について、いくつか確認するポイントがあります。
4枚目の葉っぱが指標になる!
苗の生育状況の指標として、成長点から4枚目の葉っぱの状況を確認することである程度わかります!
4枚目の葉っぱの大きさが11cm以上
まずは葉っぱの大きさです。大きく元気に育っていないと、何か理由があります。
この苗はギリギリ合格ですね。
4枚目の葉っぱの色!SPADメータの計測結果が40以上
次のチェックポイントは、葉っぱの色です。葉っぱの色と言っても、肉眼での判断は限界があるので、SPADメータという、葉っぱの色素を数値化する計測機器を使います。
このように、その場で使えるハンディータイプの計測器です。
この葉っぱは明らかに黄色がかっていて、健康状態ではないです。何かが不足しています。
色素が不足する原因
この葉っぱの色素は18でした。40には程遠いくらい緑の色素が薄いです。
4枚目の葉っぱの色素が薄い、または、黄色くなる理由には、大きくわけて2つあります。
- マグネシウム欠乏
→新芽に近い新しい葉っぱだけが黄色がかっている。5枚目以前の古い葉っぱは問題なし! - 鉄欠乏
→新しい葉っぱに加えて、5枚目以前の古い葉っぱまで黄色がかっている。
上記、いずれにおいても、一番の原因は炭素(C)不足です。ここの土(ジャーガル)はそもそも鉄が溶けづらく、植物が上手く吸い上げられないため、鉄不足が発生しやすい。
沖縄の土は炭素不足
そもそも、沖縄本島の土は、本土の土と比べて、炭素(C)が少ない傾向にあるようです。
パッションフルーツを栽培するにあたって、必要なのは、弱酸性の土です。そのため、サプリメント的に、炭素補給をした場合、クエン酸を薄めて散布する方法が即効性もあり、とても有効だそうです。
葉っぱから直接的に炭素(C)を吸わせるには、尿素が一番良いそうです。根っこから吸わせるには、硫酸アンモニウムが良いそうです。
今回は、クエン酸を500倍、尿素を2000倍に薄めて散布しました。これを週に1回くらいのペースで散布すると、パッションフルーツに必要な炭素を補給できるそうです。さすがプロの経験則!とても勉強になります。
仕立て
パッションフルーツに限らず、成長を促すためには、新芽を上に向かせておくことが重要です。
パッションフルーツはつる性の植物なので、ある程度伸びてきたら、支柱に巻き付いて上に伸びていくように仕立てて上げる必要があります。
新芽の側にあるクリクリ巻いたつるを、支柱へ誘引して巻き付けてあげると、自らの力で上向きに伸びていきます!つるが短く巻き付けが難しい場合は、麻ひもなどで支柱へ結んであげるといいです。
理想形
今回は緊急事態宣言の影響で8月、9月の作業が思うようにいかず、苗植えと栽培管理が遅れてしまいました。本来であれば、8月末には、人の背丈くらいまで成長しているのがベストです。
現状では、自分たちのハウスの中の状況だけで、苗の生育の良し悪しを対照的に見ているので、本来あるべき姿の理想形がわかりません。なので、農業改良普及センターの方に、この辺りで一番うまく行っている農家さんの状況を見せてほしい!とお願いしたところ、快諾してくれました。
近くでパッションフルーツの栽培に成功して、ノウハウを確立している、Iさんのハウスを見学させてもらえる機会をいただきました。
本来であれば、8月末の時点で、写真のように孫枝が出ているくらいまで成長しているのがベストだそうです。
このように、上手な見本を見せてもらえると、創意工夫のやりがいがありますね!環境が大きく変わらない状況で、ここまで元気に生育できるのですから、自分たちにできないわけはないです。
環境こそ、若干の違いはあれど、基本的な気候や、品種は変わらないはずなので、やり方次第で、もっと上手に育成できるはずです。
いろいろと学ぶべきことが多く、失敗続きではありますが、農業というのは、自然が相手なので、なるようにしかなりません。その中でも、どれだけ手間暇かけて、植物の声を聴いて、いち早く異変に気付くことができて、修復できるかが、大きな鍵となるということを、身をもって経験しています。
次回、今後の栽培状況と、上手くいけば、電球をつけて、花を咲かせることができれば、受粉作業までいけると思いますので、次のタイミングでまた栽培方法のポイントについて掲載しますね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!他にも沖縄での就農、パッションフルーツの栽培に関連した記事を書いていますので参考にしてください。
パッションフルーツの栽培方法、ポイントについての記事はこちら
沖縄で農業するまでの様子について書いた記事はこちら
就農経験ゼロから沖縄で就農するまでについて書いた記事はこちら
沖縄に移住したからこそわかる魅力と注意点についての記事はこちら
EM研究機構 直営農場サンシャインファームの朝市の記事はこちら
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